シングルイシューにおさらばしよう
私はノンバイナリー(男か女ではない)のトランスジェンダーで、在日朝鮮人3世で精神疾患がある。階級は貧困層。そんな話を出来る場所はあまり無い。私の朝鮮ルーツのコミュニティ、例えば父方の親族コミュニティでは、強い家父長制規範がある。男じゃないから台所に行け、女らしくしない、大人の言う規範や常識通りにしない変な子とか、結婚しないとは長子の自覚がない、同性同士や結婚に結びつかない恋愛なんか遊びだと言われ、外れ者とされ居場所がなかった。
上段で言及した構造が発生する基盤となる思想が家父長制である。つまり大黒柱たる健康な男子に権力があり、女性や子どもはその所有物であり、家制度は子孫を増やすと言う性質を持つもので、女性や子どもの権利は無いものとされている。その規範から外れる生き方は否定されてきた。トランスジェンダーや同性愛者。障害者は家の恥とされ外に出さない。優生思想の元、障害者に断種を強いる不妊手術を国を挙げた政策として施した歴史や障害者の性を否定して疎外してきた社会に対して、障害者解放運動が展開されてきたが、トランスジェンダーである障害者もまた不可視化されてきた。家父長制を元にした制度や思想の持つ加害性は書ききれないほど多岐に渡る。
私達在日朝鮮人の祖父母・親世代は入管に収容され強制送還されてきた歴史があった。天皇制の下で虐殺をしていた特高警察が入管という組織に改変され今も残存している。今日の入管収容施設では毎日のように難民の人達に苛烈な暴力が加えられ続けているが、入管収容施設を過去の運動の中で解体出来ていたら...と思うと心が凄く痛む。
今、難民の人達に入管で暴力が振るわれ続けているのはそんな現実を見ないでも暮らして来れた私やあなたの、我々日本社会の構造を支えている者の加害性は免れない。
セクシャルマイノリティの場では在日朝鮮人の事には多くの人は興味ないし、精神病者には、メンヘラお断りってカジュアルな言葉で門前払いされている。殆どの人は障害者の話に興味がない、社会の現実。
どこに行っても馴染めない。そんな馴染めなさ、あなたにも経験がありませんか?
セクシャルマイノリティ運動の中でも目立つのは同性婚推進イシューばかり。ノンバイナリーやトランスジェンダー、バイセクシャルの話、外国籍者の権利や、朝鮮にルーツがある人の権利。ダブルやミックスルーツの人の権利。難民/入管問題、人種差別、民族差別、アイヌ、琉球の先住民族差別、部落差別、障害/病気を持つ人、貧困/野宿生活者、セックスワーカーの話は複合差別問題としてもっと話題に上がってもいいはずだ。
これらの属性をすべて併せ持つトランスジェンダーだって、いる。入管の被収容者や仮放免者の中にも。
日本社会で様々な人々を不可視化している構造は、多くのセクマイの場にもある。
性別二元論に基づくジャッジで否定され苦しむノンバイナリー。モノセクシャル中心の場ではバイセクシャルやパンセクシャルの人々の背景は無視される。Aセクシャルで性的な事をしたくない人は世の中の性愛中心主義に、Aロマンティックで恋愛に興味がない人は大量の恋愛至上主義な言説/物語が何見てもあるからうんざりしてるんじゃないか...
不可視化されたり、周縁化されてる、端っこに追いやられていく、社会で放置されてるさまざまな差別にみんなで抵抗していく。シングルイシューにおさらばしよう!そんなデモをやりたいです。
(以上の文章は呼びかけ文を改定したものです。)
文責:かんす
