トランスジェンダー、ノンバイナリー、在日朝鮮人、入管被収容者、非正規滞在者、障害者、セックスワーカー、野宿者、女性、周縁化された様々な人々への、暴力と差別をやめろ!

トランスジェンダー差別について

 「生まれた時に割り当てられた性別」と同じ性別の人として、自己を認識して生きている人のことを「シスジェンダー」と言います。社会にはシスジェンダーではない人たちもいて、そういう人たちの性別のあり方を、包括的に、「トランスジェンダー」と言います。トランスジェンダーといってもそのあり方は様々です。女性ないし男性として自分を認識する人もいれば、どちらでもないという人や、よく分からないという人もいます(そういった人たちの中には「性同一性障害」「Xジェンダー」「ノンバイナリー」「中性」などのラベルで自己を認識したり表明したりする人もいます)。
 また、自分の認識する性別で暮らしている人もいれば、そうでない人もいます。自分の性別を公にしている人もいれば、していない人もいます。女性ないし男性としてのジェンダー規範に同化しようとする人もいれば、女性ないし男性として自分を認識していても既存のジェンダー規範には同化しない人もいます。ですので、トランスジェンダーといっても人によって様々で、他人が外見から判断することは、もちろんできません。
 トランスジェンダーの人々に対しての根強い差別と偏見が日本社会には未だに存在します。近年トランス差別言説がTwitterなどで著しく増加していますが、差別は昔からずっとあることで今にはじまったことではなく、インターネットのなかのみならず現実の生活で当事者を傷つけ、苦しめています。
 まず、トランスジェンダーの人々に対する十分な理解と知識が社会の至る所で非常に不足しているのが実態です。そのため、自分がトランスジェンダーであっても、周囲との関係性が原因で望む性別で暮らすことがなかなか出来ない、あるいは自分の性別で暮らしだしても周囲から屈辱的な扱いを受けたり、攻撃されるということが多々あります。出生時に割り当てられた性別や外見などを理由に間違った性別で扱われることをはじめとしてさまざまなハラスメントが日常生活・職場・学校などで当事者になされています。
 トランスジェンダーの人々を生き辛くさせている主たる要因として、「誰が男か女かは本人がどう感じていようと生まれた時点で決まっている」という思い込みが社会において支配的であることが挙げられます。また、女ならかくあるべき、男ならかくあるべき、という価値観も未だに根強くあります。このことが当事者への差別と偏見につながっています。さらに近年はトランスジェンダーの認知度が以前よりは上がりましたが、偏った当事者像が流布されているという問題もあり、「トランスジェンダーならこんな風に違いない」という形の偏見も存在するのが現状です。
 同時に、こうした男女二元論的なものの考え方を生み出し、またその実践ともなっている社会の仕組みが非常に大きな問題です。トイレ、更衣室、銭湯、温泉などプライバシーの尊重が求められる公共空間では、使う場所が男女別に区分されていることが一般的です。このためトランスジェンダーの人たちは、性別で区切られた空間を利用する上で多大な不便を強いられたり、事実上排除されてしまったりしています。加えて、そもそも男女二元論的な空間の区切り方は。「男」か「女」のいずれかの自己認識を持たない人たちの存在を不可視化し、社会から完全に居場所を奪うものです。
 自分の性別に割り振られた空間を使う権利の保障が、当然のこととしてなされるべきです。また同時に、性別で公共空間を区切ることの妥当性自体が問われるべきです。
 また、現在の制度では、日本国籍がある場合には出生時に性別が戸籍に記載され、それをもとに公的な書類にも性別が記載されます。自分の望む性別での扱いを求めても、戸籍上の性別で扱われることが往々にしてなされます。このことも当事者にとっては差別的な仕組みと言わざるを得ません。戸籍上の性別を変更することは法律上可能ですが、要件が非常に厳しいという問題があります。まず、結婚していないこと及び子どもがいないことが要件になっているため、既に結婚していたり、子どものいる人は性別を変えられません。また、性別適合手術を受けて、身体の生殖機能をなくすことも要件となっており、本人の希望に関わりなく断種を強制されるという問題があります。加えて性別変更は18歳以上にならないと出来ないため、その年齢未満のトランスジェンダーの人も性別を変えられません。
 戸籍制度及び公的な書類への性別記載それ自体が改められるべきですし、少なくとも本人の申し出だけで公的な書類での性別を変えられるようにするべきです。病院で性同一性障害の診断を受けていれば、戸籍上の性別の変更を経てなくても望む性別での扱いが受けられることも多くなってはきましたが、本人の申し出よりも医師の出す診断書の方が優先されるということ自体がトランスジェンダーの人たちの性別が尊重されていないことの現われです。
 加えて、トランスジェンダーの人たちのなかには、身体への医療的な措置を受けるために医療機関につながることを希望する人も一定数います。しかし、十分な質と安全性を保った医療を提供できる機関が日本国内には限られており、費用も高額でほとんどの場合保険が適用外なのが実態です。そのため、当事者の間でも経済的な格差が大きな影響を及ぼします。高額なお金がないと、自身の望む医療を受けることが出来ないのです。本人が望む範囲で十分な医療を受けられるような環境整備が、早急になされて然るべきです。
 そして最後に大事なこととして、トランスジェンダーも「日本人」「健全者」だけではありません。在日朝鮮人、障害者など、他のマイノリティ性をも併せ持つ人が少なからずいるということを忘れてはいけません。トランスジェンダーの内部にも差別があります。すべてのトランスジェンダーの人々が生きやすい社会を作るためには、あらゆる差別をなくしていかなければなりません。そのためにも各々が自分のマジョリテイ性を問いつつ、差別と闘っていくことが大事です。

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